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七月堂古書部4年目の春。

この4月29日、平成最後の営業日に、七月堂古書部は4年目をむかえることができました。
これもひとえに、ご来店くださる皆さま、お取り引きをしてくださっている作家の方々、書店の皆さまのおかげです。
心よりお礼を申しあげます。


出版の事務所の入り口に数本の本棚をたてて、スタッフの近親者の不要になった本の新たな引き取り手を探す、というのが古書部のはじまりでした。


七月堂は、本をつくりたい人と共に歩んできた、おもに詩集を出版しているちいさなちいさな会社です。
原稿が届き、版をつくり、作家の方々と推敲をかさね、紙を選んだりしながら、本をつくります。


そして、古書部という場を持つことで、お客さまに直接自社の本をお届けできるようになったばかりか、本を買い取り、新たな読者へ手渡す場として、本の一生の多くの場面に立ち会うことができるようになりました。


七月堂の本を買い取る時もあります。
捨てないでくださったことに感謝の気持ちがこみあげます。
おかえり、また、誰かに手にしてもらえますように、と願いながら棚にさします。


ある夏。
湊禎佳さんの詩集『青い夢の、祈り』という詩集を出版しました。
沖縄の気候や土や文化で育まれた、「いのち」と「生死」をめぐる祈りの詩集でした。


当時編集を担当したスタッフの岡島が、この詩集をもって沖縄へ飛びました。


いろいろな書店さまを回り、そのうちのひとつに、「市場の古本屋ウララ」さんがありました。
店主の宇田さんは、快く詩集を置いてくださり、岡島は、「七月堂でも古本を売ることができるのではないか」というアイディアを、大きな手土産として持ち帰ってくれました。


当時私は体調をくずし、仕事を超スローペースにして何年かたっていたのですが、体調もよくなってきていたある日、岡島が印刷機をまわす事務所にふらりと近所のパンを持って差し入れに行ったら、「古書部の店長をやりませんか?」とまっすぐ目を見て問われたのです。


それから、社長や岡島と相談をかさね、具体的にどんな風に七月堂内に古書部をつくっていくかを決めていきました。


年内にオープンしたいと思っていましたが、なにせ本が好きなだけの素人が準備をするのですから、古本のクリーニングや値付けも手探りですし、古書部をオープンすることをごく近しい人たちに話すと、ありがたいことに、寄付もふくめたたくさんの本をお譲りいただき、その整理にはかなりの時間が必要でした。


古書部は本棚一本分くらいを想定していたのですが、オープン時の在庫は2000冊強となり、スタートの時点で、すでに当初の計画をはるかに超えていました。


七月堂の倉庫に眠っていた70~90年代の本を持ってきて磨き、これは古本として売るのか、新本として売るのか、いや、アウトレットだろう、しかしそうなると、いったいいくらで…。
決めなくてはいけないことも湧いてきます。


あちこちの古本屋さんに行き、どんな風に値付けをしているのかを見て回りました。
同じ本でも、それは店舗によって様々でした。


ご縁のあった古本屋さんに通い、棚のこと、ディスプレイのこと、値付けのこと、買い取りをする時のこと、古本を扱うためのたくさんのアドバイスを、図々しくもいただきました。


お忙しいなか、みなさま快くおこたえくださり、また笑顔で励ましてくださいました。
「本を売る」ということに、向き合う毎日がつづきました。


そして、古書部を設立するのと同時に、七月堂書籍の営業も担当しました。


それまで文字の組版をつくることしかしたことがなく、パソコンとばかり向き合っていたのに、様々な立場に立っておられる沢山の方と、真剣なやりとりをしなければならない職にポンと飛び込むこととなったのです。


七月堂のスタッフは製作に追われており、きちんと営業にまわれる人間がそれまでおらず、「とにかくその書店の棚をじっくり見てからお声をかけること」というアドバイスと、詩集と、営業チラシを鞄にいれて、初日からひとりで営業の現場へ飛び込むこととなりました。


無我夢中だったと思います。
たくさんの失礼があったと思います。
恥ずかしいと思うことばかりです。


進むしかないというなかで、出版という「本をつくること」と、古書部の「本をお客さまに届けること」が表裏一体だということを実感してゆきます。


古書部で委託販売などの営業を受ける立場になり、営業に行った先での書店さまのご都合や、担当の方の思うところを考えるようになりました。



そのお店の、または、棚を作っている方に選んでもらうということは、その本を売ってみようと思ってくれていることなのだと、当たり前のことに気づきました。


でもそこには、家賃や光熱費や人件費など、現実的な問題がのしかかっていて、きれいごとや思いだけでその場を守っていくことができないことも痛感しました。


本屋さんの棚は、店主さまや担当さまが、時間をかけてつくってきたお客さまとの信頼関係のうえで、お客さまにむかって並べられています。


「1冊分の本のスペースをお借りすること。」


その重みを知れたことが、本をつくっていく立場にとって、どれだけ大きな収穫だったか。


一冊を作るまでの書き手の方々の思いを考え、また、あれこれと工夫を重ねて時間をかけて製作した本は、どれだって本当は置いていただきたい。
それならばなおの事、書店さまとお客さまとの関係に、耳を澄まさなければいけないということ。


古書部を運営してみて苦労を重ねなければ、なかなか辿り着くことのできなかったことだろうと思います。


古書部は真面目に本屋になろうとし続けています。
でも、出版することから離れて歩いていこうとも思っていません。


2018年の春には、全国の、たくさんの街の本屋さんとの出会いがありました。


今年の春、長崎のひとやすみ書店さん、福岡のナツメ書店さん、本のあるところajiroさん、市場の古本屋ウララさんへうかがい、あらためて本を置いていただいていることに、頭のあがらない気持ちでいっぱいになって帰ってきました。


ありがたい気持ちをふくらませて、古書部は4年目の春をむかえます。


まだまだ、すべてが勉強中の身ではありますが、どうぞこれからもよろしくお願い申しあげます。


2019年4月29日
七月堂古書部 後藤聖子





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